だからやっぱりギブソンが好き

Gibsonの古いギターと、ラグタイム音楽、そしてももクロをこよなく愛するフリー物書き、キタムラのブログ

ストレス反応は友達。私を守っている

TEDのレクチャーで、おもしろいスピーチを見つけた。

スタンフォードの心理学者、ケリー・マクゴニガルが語るストレスの話。

英語のスピーチですが、平易な表現ではっきりしゃべっているので、かなり聞きやすいです。

くわえて、こちらにスピーチを書き起こしたテキストがあります。

最初は英文が出ますが、「Japanese」を選べば翻訳文を読めます。

ポイントは3つ。

(1)ストレスが健康を害するのは、「ストレスは体に害だ」と信じている人において起きる現象。そう思っていない人は、強いストレスがかかっても死亡リスクは上がらない。

(2)ストレスを負荷する実験で、被験者に「ストレス反応はあなたの体を助ける働きをするものだ」と伝えておくと、血管が緊張しないため、心拍や呼吸数が上がっても不健康な状態にならない。これは「喜び」や「勇気」を感じているときの身体状態に近いという。

(3)ストレス時にはオキシトシンが分泌されて、ストレスによる身体へのネガティブな影響を軽減させ、体の回復力を高めている。オキシトシンは人との接触や交流で増えるため、ストレス時には人と交わることが有効と考えられる。

総じて、ストレスをどういうものととらえ、ストレス下でどんな行動をするかで(つまり自分の選択次第で)、ストレスの身体への影響は変化させられる。

大事なことは、ストレス反応を「敵」ではなく、「自分を守るもの」ととらえて、感謝して受け取ること。

そして、人とのつながりを忘れないこと。

断食で免疫細胞の増殖が刺激される

Cell Stem Cell誌より 2〜4日ほど断食をすると免疫細胞(白血球)の増殖が刺激される、という論文がありました。南カリフォルニア大の研究チーム。 カロリー制限の話は長寿やアンチエイジングとの関連でずっと注目を集めていますが、断食をきちんと調べている研究者もいるんですね。

味の「好み」を決める遺伝子から、最適のダイエットがわかる?

現在ミラノで開催中の欧州人類遺伝学会(European Society of Human Genetics)で発表。

このページニュースリリースの上から二つ目。

またはこちらのページ。

特定の味に対する感受性や好き嫌いを左右する遺伝子を発見。

味の好みは、その人の代謝バランス(脂質代謝が強いとか、弱いとか)を反映しているらしい。

そこで遺伝子タイプに合わせた食事を提供すると、より早くやせて、健康になる、、というような話。

ようは、遺伝子診断ベースで個別の体質に合わせた食事療法を提供します、というところを目指しているわけですね。

まだ論文にはなっていないようです。

ラジオで「スゴイカラダ」を語ります!

ラジオ出演が決まりました!

ニッポン放送 「高嶋ひでたけのあさラジ」 

月〜金の朝5時〜6時

この中の、5:54ころから5分程度、「ラジオ人間ドック」という健康コーナーです。

来週、5/19〜23の5日間、毎朝放送されます。

かなり早朝ですが、この時間に起きている方は、ぜひ聞いてみてください。

先ほど収録してきたのですが、なかなか傑作な感じのおしゃべりになりました(笑)

「こんなのでいいんですか?」と何度も聞きましたが、「OKです。面白いです」と高嶋さんにおだてられて(笑)、その気になって好きなようにしゃべらせてもらいました。

基本的には『スゴイカラダ』に収録されている内容をネタにしています。

「カラダってすごいなぁ」を、ラジオでもお楽しみください。

うんこに「ありがとう」を言おう

もう10年以上になるでしょうか、僕はトイレでうんこが出たあと、そいつに向かって「ありがとう」と声をかけることにしています。

これを始めたきっかけの発想は、「なにか食べるときに食べ物に向かって“いただきます”というのだから、出てきたものに対しても何か言った方がいいよな」と考えたから。

で、、その後、うんこの組成のうち食べ物由来の成分は3分の1程度で、あと3分の1は腸内細菌であることに気づきました。

まあ、腸内細菌に向かって「ありがとう」というのも悪いことではないと思うので、これはこれでありでしょう。

それで、、、最近気がついたのは、さらに残った3分の1ははがれ落ちた腸粘膜、つまり腸上皮細胞の死骸だ、ということ。

上皮細胞は新陳代謝でつねに古いものがアポトーシスで死に、新たな細胞に入れ替わっているわけです。腸上皮細胞の代謝サイクルは確か1〜数日程度。

これが死なないとどうなるか、、といいますと、死ななくなったやつが大腸がんになるわけですね。

ということは、、、この「ありがとう」には、「大腸がんにならなくてありがとう」という意味もあるわけだ。。と思ったのでした。

腸内細菌バランスをコントロールするホスト側メカニズム:カギはATPだった(論文クリップ)

腸管内の善玉菌増殖を、ホストの動物が分泌する物質が後押しするメカニズムが見つかりました。

Gastrointestinal and Liver Physiology, 2014; DOI: 10.1152/ajpgi.00357.2013

カギを握っているのはATP分子。ATPは、細胞内のエネルギー分子としてよく知られていますが、腸管内ではバクテリアの成長阻害因子として働きます。

で、ATPの作用を抑える物質「intestinal alkaline phosphatase」(IAP:消化管アルカリリン酸化酵素、でいいかな)をホスト動物の腸の細胞が分泌している。こいつの作用でATPの働きがブロックされれば、腸内の善玉菌が増える、、というお話。

IAP遺伝子をノックアウトしたマウスでは腸内細菌バランスが乱れて悪玉菌が増えた、とか、その手のデータが出ているようです。

腸内細菌は、100〜1000種ものバクテリアが相互作用する複雑な生態系であり、その中の菌を1種類ずつ取り上げて「これがいい」とか「こいつが悪い」などと評価するのは難しいです(単に難しいだけでなく、おそらくそういう二分法的な発想で解釈すること自体が間違っています)。

ただ、そういう複雑な系の全体的なトレンドが、比較的単純なパラメーター(温度とか、pHとか)によってがらっと変化し、結果として健康的な方(ないし不健康な方)へどどっとと傾くのは、意外とよくあることです。

人間社会もそうですね。完全な善人や、完全な悪人などというのはどこにもおらず、たいていみんな程々のところで周りと折り合いながら生きていますが、社会全体のトレンド(景気動向とか、異常気象とか)によってふと、世の中の雰囲気ががっと一つの方向に傾いたりする。

(そういうよくわからない「時代の流れ」の中で、気がついたら国が戦争をしてたりすることもあります)

ATPも、そんな感じで腸内環境の全体的なトレンドを左右するキーファクターなのかもしれませんね。

泉谷しげる「楽曲廃棄」宣言に思う、失敗から何を学ぶか

泉谷しげるさんが、過去の楽曲のうち2曲を「永久に廃棄する」と宣言したそうだ。

本人ブログはこちら

それに関する報道がこちら(Huffpostより)

 

以下、Huffpost記事の冒頭部引用____

 

 

シンガーソングライターの泉谷しげるさんが、自作の楽曲2作品の著作権を放棄する意向を明らかにした。5月5日、公式ブログで表明した。

 

泉谷さんが「このさい永久に“廃棄”することにした」という2曲は、1973年に発表された『自殺のすすめ』と、1975年4月『先天性欲情魔』の2曲。歌詞に過激な言葉が含まれており、泉谷さん本人も次のように振り返っている。

 

 

20代前半に作った「自殺のすすめ」「先天性欲情魔」とかとか! なんてヒッドイ歌だ! こんなイロモノソングなんぞ〜オイラが作ったンじゃなくゴーストライターに造らせたに決まってる!(笑) わけえときのツッパリぐあいをトシくってから見返すと〜稚拙だワイ! ホント恥ずかしい…。 (泉谷しげるオフィシャルブログ『リターンズの壱』より 2014/04/04)

________________

Huffpostのリンクをたどって、廃棄にした2曲の歌詞を見てみた。

確かに、ひどい。あまりにひどい。 なるほど、本人にとってこれは強烈な汚点だろうな。。と思う。

 

僕も、物書きという職業(および、細々とながらギター音楽活動)をしており、表現者というくくりでいえば、他人事ではない。

 

続きを読む

レジャー運動が多ければ歳を取っても元気、でも肉体仕事は・・・(論文クリップ)

北欧からもうひとつ、非常に興味深いな研究です。

Journal of the American Geriatrics Society, 2014; DOI: 10.1111/jgs.12793

フィンランドで行われた大規模な疫学研究。

1981年に、5200人の自治体職員(40代後半〜50代)の身体活動性(体を動かしているかどうか)を調査。

このとき、「レジャー時の活動性」と「業務時の活動性」を分けて調べた。

28年経った2009年、高齢になった彼らの身体機能を調査して、以前の活動性と比べたところ、

●レジャーで体を動かしていた人ほど、歳を取っても体の機能が維持されていた

●業務では逆に、体を動かしていた人ほど、歳を取ると体の機能が失われていた

という、まったく逆の傾向が判明した。

うーむ、すごい結果です。

なぜこんな結果になったのかの解釈はいろいろ考えられるでしょうけど、

容易に想像されるのは、業務で激しく体を動かした人の多くは、レジャーと違って、

おそらくそれを楽しんではいなかっただろう、という点でしょうか。

もしその違いが、歳を取ってからの身体機能維持に対して

真逆の影響を与えるとしたら、、、すごいことです。

腸粘膜の面積はテニスコート並み・・・は間違いだった(論文クリップ)

ちょっと寂しい(?)ニュース。Scandinavian Journal of Gastroenterologyから

「スゴイカラダ」でも触れていますが、人間の消化管内面の表面積はこれまで、260〜300平米ぐらい、テニスコート並みの広さと見積もられてきました。

ところが、スウェーデンの研究者が電子顕微鏡などを使って改めて見積もった結果、面積は30平米程度、バドミントンコートの半分ぐらいと評価が改まりました。

測定技術は進歩していますから、たぶん今回の計測の方がより正確と思われます。

まあ、常識を疑って再評価を行った研究者には拍手を送ります。

でも、、なぜかちょっと寂しい気分です。。

「スゴイカラダ」発売になりました

お待たせしました〜。 『スゴイカラダ ~ あなたの健康を保つ驚くべきしくみ』 いよいよ発売になりました。
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24時間絶え間なく働く、人体のしくみを紹介する47篇のストーリー。 「すごいなー」「へー」と感心しながら読んでいるうちに、どんどんカラダのことがいとおしく感じられると思います。 もともとは、日経ヘルスで5年以上連載していた「働きもののカラダのしくみ」という記事がベースになっています。 でも、書籍化にあたってかなり書き換えた部分もあるので、雑誌で読んでいた方も、改めて新鮮に読んでいただけると思います。 お薦めは、例えば「胃」の話なら胃のあたりを、「腎臓」なら腎臓のあたりをなでながら読むこと。 カラダで感じる実感が、ひと味違ってきますよ、 ぜひお試しください。