【シリーズエッセイ】カラダにまつわる数字のリアリティー その2「バクテリアと人体、日本の人口密度」

カラダにまつわる数字シリーズ、2回目です。
前回に引き続き、今回も、ものの大きさを100万倍に拡大した「ミリオンスケールの世界」を舞台に、話を始めたいと思います。

 

この世界では、DNAの太さ(2ナノメートル)がタコ糸ぐらい(2ミリメートル)に、ヒトの細胞の大きさ(一辺10〜数十ミクロン程度)が小学校の体育館ぐらい(一辺10〜数十メートル程度)にスケールアップされます。

DNAと細胞といえば、ミクロ生物学で名前をよく聞く2大アイテム。どちらも僕らの日常感覚的なスケールからみれば「とっても小さい」わけですが、その「とっても小さい」の間にも、実はこんなに大きさの差がある。

このへんって、意外と実感としてピンときてないことが多いと思うんですよ。

 

ということで、もう一つ、お題を挙げましょう。

 

健康意識が高い系の人なら、「腸内細菌」という言葉は、当然、ご存知だと思います。

腸(主に大腸)の中には、大量の細菌(バクテリア)が住み着いており、その種類や働きぶりが、私たちの健康状態に大きな影響を与えている、というお話は、今やもう常識といっていいほどよく知られていますね。

 

 

では、これら細菌(バクテリア)は、ミリオンスケールの世界で見ると、どのくらいの大きさになるでしょうか?

 

 

バクテリアは、1個体が1個の細胞でできている「単細胞生物」です。

 

だったら、さっき「細胞のサイズが小学校の体育館ぐらい」って出てきてたし、バクテリアもそれぐらいじゃない? って思った人もいるでしょうね。

 

ブブーー、残念でした。

 

体育館サイズになるのは、ヒトの細胞の話です。

 

まあ、ヒトに限らず、多細胞生物はおおむね、こんなもんでしょう。

 

 

でもバクテリアの細胞は、もっと小さいのです。

バクテリアの種類によってかなり差がありますが、大まかに言うと、1ミクロン前後。

これをミリオンスケールにもっていくと、、、1メートル前後です。

まあ、うーんとざっくり言ってしまえば、われわれ人間ぐらいの大きさですね。

 

体育館サイズと、人間サイズ。

はい、ずいぶん違いましたね。

同じ「細胞」という言葉で呼ばれる構造でも、生き物の種類によってこんなに違うんです。

 

さらに小さい奴らもいます。

 

「ウイルス」です。

 

ウイルスは、病原体として有名なやつが多いんですが(インフルエンザとか、ノロとか、エイズとか)、どれもバクテリアよりさらに小さいです。

なかでもノロウイルスは小さくて、30ナノメートルぐらい。

インフルはもうちょっと大きいけど、それでも100ナノメートル(0.1ミクロン)程度。

 

これらをミリオンスケールに持ってくれば、、、

 

ノロウイルスは直径3センチ。ゴルフボールより一回り小さいぐらいです。

インフルエンザは10センチ程度。これは、リンゴぐらいですね。

 

病原体であるウイルスのサイズが小さいほど、防御のためのバリアの網目を軽々とすり抜けることになります。

たとえば、一般的なマスクによく使われる不織布の隙間(穴)は、5ミクロン程度だそうです。これをミリオンスケールに持ってくると、5メートルもの巨大な穴があいてることになる。

防ぐべき相手のインフルエンザウイルスは、リンゴ大なんです。

侵入を防ぐという目的で言うなら、マスクはほとんど用を足さないのが、お分かり頂けると思います。

 

ということで、、、

 

タコ糸DNAから始まって、ウイルス、バクテリア、ヒトの細胞と、いろんな大きさのアイテムがずらりと揃いました。

ミクロの生物界のサイズ感が、かなり実感として浮かんできたんじゃないでしょうか。

 

では最後に、この世界で「人間」はどのくらいの大きさになるのかも、確認しておきましょう。

 

ヒントは、すでに前回、出てきています。

そうです。DNAの「長さ」の話です。

 

細胞1個に収まっている人間1個体分の情報を記録するDNAは、長さ2メートルにも及びます。それをミリオンワールドに持っていくと、2000キロ、でしたね。

 

人間の身長は、1・5〜2メートルぐらい。つまりDNA1個体分と、大まかに同じぐらいです。

ですから、ミリオンスケールにおける人間の大きさも、ほぼ同じことがいえます。

だいたい「日本列島ぐらい」なのです。

 

これ、ちょっと面白いですね。

 

バクテリアを人間大まで拡大するミリオンスケールの世界では、人間は日本列島のサイズになる。

 

 

これは、別な言い方をするなら、、、

 

バクテリアからみた人間は、人間からみた日本列島ぐらいに大きな相手、なのです。

 

これは、、、ガリバー旅行記どころじゃないですね。

 

現代に生きるわれわれは、学校で習った知識やグーグルマップなどの表示をよりどころに、日本列島の大きさや形を、知識として知っています。

そして、そういった知識をベースに地球スケールから見るなら、日本列島は、ごく小さな存在です。

だから、「小さな島国」のような言葉が、私たちのイメージの中に染み込んでいます。

 

でも、、もし伊能忠敬さんのように実際に歩いてみたら、、、きっと「気が遠くなるほど大きい(遠い)」と感じると思う。

 

数字のリアリティーって、そういうことだと思うんですね。

 

 

 

そして、バクテリアから見たわれわれ人間は、それほどに大きな存在だということです。

 

 

さて、、私たち人間の身体には、膨大な数の菌が住み着いています。

彼らはまとめて「常在菌」と呼ばれます。

 

常在菌がいないと、健全な生命活動が営めないほど、彼らの存在は私たちの身体活動と深く、結びついています。

 

一番多いのは、先にも紹介した、腸内細菌。

約100兆個もの菌が、大腸内にすみついていると考えられています。

 

また、それよりは少ないですが、皮膚にもじつに多くの菌が住み着いています。

 

皮膚常在菌の数は、約1兆個と見積もられています。

 

さて、、、

 

ミリオンスケールにおいて、細菌は人間ぐらい、そして人体は日本列島ぐらいのサイズになるわけですが、、

 

この話と、「皮膚常在菌の数は1兆個」という数字を見比べると、、、

 

驚くべきことに気付かされます。

 

現実の日本列島には、人間は1億2700万人ほどしか、住んでいないのです。

 

でも、人間とほぼ同サイズに拡大された菌は、日本列島大に拡大された人体の表面に、1兆個も住んでいるのです。

 

これ、、すごくないですか。

 

以下、wikiの「人口密度」のページから、数値を拾います。

 

日本の人口密度は343人(1平方キロあたり)。

これは山間部なども含めた全国平均地で、都市部に限ればもっと大きな数値になります。東京23区だけなら、14389人。
都市の人口密度で世界トップは、モルディブの首都マレで、35000人だそうです。
この数値なら、全国平均の約100倍。ですから、仮にこのマレと同じ密度で日本全国に人を住まわせると、日本の人口は100億人を越える計算になります。

 

多分そのあたりが、人間らしい生活ができる上限でしょう。

それでも、1兆個にはまだ全然足りない。
さらにその100倍もの密度なのです。

繰り返します。

これ、、すごくないですか。

 

いやもちろん、めちゃめちゃ乱暴な議論ですよ。

バクテリアとホモサピエンスを一緒くたにしてるんですから。

しかも、現実の日本列島は人体のような立体じゃないし。

 

でも、、それにしても、ここまで桁違いに高密度な数値を見せられると、ギョッとするわけです。


さらにですよ、、腸の中には、そのさらに100倍の数の菌が住んでいるのですよ。

 

一体、、どうなってるんだ。

バクテリアって、、よっぽど密集して生きてるんだろうな。

 

はい。その通り。彼らはすごく密集して生きる生き物なのです。

だから「細菌叢(そう)」っていう言葉が使われるんですね。

 

と、そんな菌たちの生きる姿を、こんなふうに数値ベースから想像してみると、また新しいイメージが浮かぶかもしれませんね。