だからやっぱりギブソンが好き

Gibsonの古いギターと、ラグタイム音楽、そしてももクロをこよなく愛するフリー物書き、キタムラのブログ

「体のセンサー」と「ギターの音」、そして「重さを感じる」こと

昨日の記事で、ヒモトレが「体のセンサー機能に働きかける」という話を書きました。

 

この件に関してFacebookでコメントをいただきまして、そこでのやりとりを通じて、さらに気づいたことがあります。そこで今日は、その話を続けますね。

 

「ギターを弾く時にヒモを巻くと、体のセンサーが繊細になる」という感覚を、僕は主に、手の指先で感じています。

 

ギターは、左手で弦を押さえ、右手で弾く楽器(右利きの場合ね)。

わかりやすいのは左手だと思うので、まずそっちの話をしますね。

 

弦を押さえる時は通常、「弦を押さえる時に指先を立てる」ことが、推奨されます。

こんなふうに、第一関節が指板に対してなるべく垂直になるのが、よいやり方。

 

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指先を寝せるのは、よろしくない。

 

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これはまあ、全くその通りなのですが。。

でも、僕が実際にギターを弾く時には、「指先を立てよう」という意識はあまり持っていません。

 

  

フォームを外観から固めようとすると、指は緊張し、動きが悪くなります。

立てさえすればいいってものじゃないのです。

 

では、どんな意識で押さえているか。

 

弦を押さえる時に伝わって来る、弦からのテンション感(反発力)を感じ取り、その力のベクトルに向かってまっすぐ指を下ろすことを意識しています。

 

もう少し正確に言うと、「意識してる」っていう言い方は、ちょっと微妙なところです。

感覚的には、「意識してる」と「指が勝手にそうなる」が半々ぐらい混ざった感じ、ってところでしょうか。

 

すると、、、結果として指先は立ちます。

弦から伝わる力をまっすぐ受け止めるには、「弦からの力」の向きと、「指先の関節」の向きをピタリと揃える必要があるのです。これは理屈の話ではなく、体感の話として、です。

だから指先は、立てようとしているわけじゃない。あくまでも結果として、立つのです。

 

感覚として似ているものを挙げるとすれば、、、

 

手のひらの上にバットや傘、モップなどを立ててバランスを取る遊びがありますよね。

あれは、手のひらの感覚でモップなどの重さ(がずれていく方向)を感じ取り、その真下へ手のひらを滑り込ませ続けることで、バランスを取っているわけです。

 

これも、意識的にやっているといえばまあそうなんですが、、でも、半ば反射的な感じともいえますよね。

 

弦を押さえるときの指先の感じは、あの感覚にそっくり。

あのときの手のひらによく似たことを、指先は弦を押さえるたびに、瞬時にやっているのです。
 

こんなふうに押さえると、弦のホールドがピタッと決まって、弦やボディの振動がかっちりと収まる(と表現されるような感触が伝わって来る)。

すると、、いい音が出るのです。

 

もう、おわかりですね。
体にひもを巻いて「センサーが繊細になる」と、この「ぴったり押さえる」感じが、見事に決まるようになるわけです。


同じようなことを、右手もやっています。

弦と右手が当たる角度も、一般になるべく垂直がいいとされます。

 

こういう角度よりも

 

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こういう角度の方が良いわけです。

 

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まあ、、、黒人のブルースギタリストなどには、上のような鋭角なアングルでものすごくかっこいい音を出す人もいるので、こればっかりは一概には言えないのですけど、、でもまあ、一般にはこのように言われています。


ただし、、これも、外観のフォームで構えを作ろうとすると、おかしなことになりやすい。
右手の場合は、指を無理に弦に直行させようとすると、手首を不自然な形で横に曲げて固定することになり、腱鞘炎などのもとになりかねません。

ここでもやはりカギは、指先で感じる弦からのテンション感。
その力のベクトルに対してまっすぐ受け止めるように指が動けば、手首を固定せずとも、「結果として」、直角に近い方向へ弦を弾くことになるのです。

さて、この情報を頭に入れて、もう一度、昨日も紹介した「ひもあり」「ひもなし」の動画を見てみてください。注目ポイントは右手の指の角度です。

ひもあり

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ひもなし

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上の写真のような露骨な差ではないものの、ごく微妙に、「ひもあり」の方が、弦を弾く瞬間の人差し指や中指の向きが、より直角に近くなっているように見えないでしょうか?

これはもちろん、意識して変えているわけではありません。

自分としてはどちらも同じように弾いたつもり。

でも、こんな差が現れている。


これが、指先のセンサー感度の差ではないかと思うわけです。

いや、これは僕も、今日になって、そういう目で見返してみたら、そういうふうに見えてきたのですよ。
そう思ってみると、微妙に、だけど、確実に違うように見えます。どうでしょうか。


さてさて、、、ここまで読んでこられたみなさんの中には、この話が楽器演奏やモップを立てる遊びに限らないテーマを含んでいることに気づいている方も多いでしょう。

たとえば、、ヒトの「立つ姿勢」。

人間は、二足で直立する動物。動物の中でも、かなり難易度の高いバランス状態を、ニュートラルな姿勢として採用しています。

直立した姿において、良い姿勢と呼ばれるものは、確かにあります。

ですが、、、外観からのアプローチで良い姿勢を実現するような姿勢修正は、体に緊張を強いるばかりで、機能的にはむしろマイナスです。

では、どうすればいい姿勢になるのか。


重要な手掛かりは、自分の体の「重さの感覚」です。
重さ(の積み上がりかた)を感知するセンサーがうまく働けば、姿勢は自然に整うのです。

ヒモトレをすると「姿勢がよくなる」ことが多いのですが、その背後には、ギターの音がよくなることと共通のメカニズムがあるのだろうと、僕は思っています。