【マイギブソンその2】ギブソンの原点はマンドリン。ってことでこれでしょ「A-4 Mandolin 1916」
そして僕が好きな音は、どうやらその原点のサウンドにあるようだ。
、、ということに気がついた時点で、これはもう理論的必然である。
こう思い始めたのは、ちょうど1年ほど前。去年の夏ころだ。
ただその時点で、僕はマンドリンという楽器のことをほとんど何も知らなかった。
触ったこともほとんどない。友人がアコギパーティーに持ってきた楽器をポロポロ鳴らしてみたことが、2、3回あったぐらいかな。
その時に、コードを3つほど教えてもらっていた。G、C、Dのスリーコード。
マンドリンの4コースのチューニングは、太い弦の方からG、D、A、E。これはギターの3〜6弦を裏返しにしたのとピッタリ重なるので(オクターブとかは無視して、音名が一緒ってことね)、ギタリストなら、シンプルなオープンコードのポジションは大体わかるのだ。
で、、コードが3つも弾ければ試奏ができるでしょ(笑)
そう思った僕は、御茶ノ水の楽器店街の、それまでスルーしていたマンドリンコーナーへ足しげく通い始めた。
まあ、試奏が練習にもなるから、ちょっとずつ曲っぽいものも弾けるようになったしね。おじいさんの古時計、とか。
その傍ら、マンドリンに詳しい友人にいろいろ教えてもらって、だんだん知識も増えていった。
フラットマンドリンには、大まかに2種類のボディスタイルがある。
F型と、A型。
こちらから引用。
写真の右側、ショルダに渦巻き構造物(スクロール)がついてるのがF型。
左側、両肩がなで肩になってるのが、A型ね。
Fのほうがちょっとだけスケール(弦長)が長い。
そのぶん、弦の張りが強く、アタッキーな音が出る。
ブルーグラスのような大編成スタイルの音楽では、鋭角なFの音色が好まれる。
一方、A型はもう少しマイルドで、味わい深い音色。
ソロとか、2、3人の小編成スタイルで演奏するには、こっちの方が向いている、とされる。
そして、1910〜20年代あたり(創業間もないころ)のギブソン製マンドリンを念頭に置いた場合、F型とA型にはもう一つ、とても重要な違いがある。
それは、値段だ。
この時代のF型マンドリンで、もしボディの中にロイド・ロア(Lloyd Loar)というサインがあったら、、、、
お値段は、ウン千万円ぐらいになるという。
まあ、いくら僕がギター道楽人間でも、これはちょっと手が出ないわな。。
※ロイド・ロアさんというのは1919〜1924ころにギブソンと契約していたマンドリンプレーヤー兼エンジニア。彼のアイデアで設計されたF-5マンドリンは、100年経った今なおフラットマンドリン界の最高峰とされており、現在の市場価格は一千万円を軽く超える。現在でも多くのメーカーや個人ビルダーが、ロイド・ロアF-5を模倣した機種を製作している。
ところが、、、A型なら、最上位機種のA-4でも30〜40万円ぐらい。廉価版のA-1とかなら、20万円未満で売られているものもあるのだ。
100年以上前に作られた貴重な楽器がこの価格帯というのは、かなりリーズナブルといえるだろう。
というわけで、僕の標的はもちろん、A型。
状態のいい古い個体を探して、ネットの楽器サイトをチェックする日が続いた。
で、、、まあ、いろいろあったんだけど。
最終的に、去年の暮れごろ、とてもいいコンディションのA-4が、かなりリーズナブル価格で出ているのを手にすることができた。
いやぁ、、それでも、大して弾けない楽器への投資としては、もちろん自己最高である(笑)
せっかく手に入れたからには、弾けるようになりたいよね。
というわけで、こんなのをチャレンジしてみた。
スコット・ジョップリンの「エンターテイナー」。
キュートな、いい音でしょ?
100年前に生まれた、ギブソンのルーツとなる音は、こんな愛らしいサウンドなのである。
現代のギブソンギターのイメージとは、だいぶん違うよね。
この曲のオリジナルはピアノ曲。1902年に発表されたその楽譜の表紙には、「ジェームズ・ブラウン氏と、彼のマンドリンクラブに捧げる」との献辞がある。だからマンドリンで弾くのがきっと、ジョップリンのイメージにも合致してるに違いない。
ここでは前半だけの演奏だが、フルバージョンはマンドリンプレーヤー藤本芙実香さんとのデュオ「レモン・アンサンブル」で練習しているので、そのうちご披露できるだろう。