【ももクロ考その11】有安杏果ソロコンビデオ「ココロノセンリツ ~Feel a heartbeat~ Vol.0 LIVE」に感じた、シンガー杏果の未来
ももクロの緑、有安杏果が去年の7月3日に行った初のソロコン「ココロノセンリツ vol.0」の映像ビデオが届いた。
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このビデオのダイジェストPVはこちら。
僕はこの日、横浜アリーナで生のライブに参加している。
素晴らしいライブだった。
12歳の時、20歳の自分に向けた手紙に綴ったという、「横浜アリーナでコンサートをする」という夢が、ついに実現されるーー
そんな喜びと感激、「私の歌をみんなに届けたい」というエネルギーに満ちた、初々しい熱気にあふれた2時間半。
・・ただ、席がけっこう後ろの端の方だったため、彼女の表情や細かいトークがあまりわからなかったのも事実だった。
今回、映像を見たことで、自分の中での杏果ソロコン体験が、ようやく完結したような気がした。
あの日感じたいろいろな情感が、いっそう鮮明になって思い返されるような、そんな映像だった。
個性派アイドルグループ、ももクロの中で、緑担当の杏果は「歌姫」って呼ばれる。
歌唱力は、5人の中でピカイチ。
単にうまいだけじゃない。歌を通じて伝わる情感の深さに、目を見張るものがあると僕は思っている。
実際、うまい歌い手は世の中にたくさんいるが、声を聞いただけで涙が溢れるようなシンガーは限られる。
杏果は、そんな歌声を持ったシンガーだ。
「いや、さすがにそれは褒めすぎでしょ」って思う?
そういう人には、このビデオを見てほしい。心から、そう思う。
それぐらい、いい。
このライブでは、アンコールも入れて、22曲を歌った。
うち、作詞や作曲に杏果本人が関わったのが、6曲。
今回のライブ&アルバム制作に合わせて、外部クリエイターから杏果に提供されたのが3曲。
一方、ももクロの曲は5曲(うち3曲はメドレーにつないで圧縮して披露)
これまでにももクロ杏果のソロ曲ないしユニット曲として作られていたのが、3曲。
あとは、これまでの彼女の経歴において、節目になった曲のカバー。
このバランスは、シンガー&ソングライターとしての彼女のキャリアが、いまちょうど過渡期にさしかかっていることを表していると思う。
おそらく、オリジナル曲はこれからもっと増えていくのだろう。
それは、彼女自身の中に、「伝えたい」「歌いたい」という強い思いがあると見て取れるから、確信を持って言える。
ももクロの一員として歌っているときはあまり表在化することのない、自分の言葉で、自分の気持ちをまっすぐに表現したいと切望する、そんな衝動。
そして、その強い思いこそが、彼女の歌の魅力の根源である。
そんな思いを象徴している曲がある。
「心の旋律」。
杏果が歌詞を書いて、武部聡志氏がメロディーをつけた。
この歌詞は、杏果が中学生の頃からいろんな思いを書きためたノートの言葉をつないで、1編の詩にまとめたのだという。
「歌いたい、歌いたい」というリフレインが、とても印象的だ。
武部さんは、80年代以降の日本のポップスの歴史を支えてきた名アレンジャー/作曲家。
ユーミン、吉田拓郎、松田聖子、斉藤由貴、久保田利伸など、武部さんと深い関わりを持つシンガーは数知れない。
その彼が、自らの60歳の節目にあわせて、自分がこれまで関わった錚々たる楽曲から選りすぐった珠玉の名曲ずくしの2枚組CDを、この2月に発売した。
その終盤に、「心の旋律」が収められている。
武部氏が、これまでの自分の歩みを振り返ったとき、その集大成ともいうべき位置に収まったのが、ユーミンでも聖子でも拓郎でもなくてももクロメンバーとの共作作品だったというのは、ちょっとした事件だと思う。
某ラジオで武部氏が語ったところによると、彼は杏果の歌詞を見て、「これは本気でやらなきゃいけない」って思ったそうだ。
大御所アレンジャーの心を揺さぶるほどの、熱くてまっすぐな思い。
そんな気持ちがそのまま、歌声を通して、聞き手の胸になだれ込んでくる。
どう? 聴きたくなってきたでしょ?(笑)
ぜひ、多くの人に聞いてほしい。
とくに、ももクロとか、アイドル音楽になんら興味をもっていない、数年前までの僕のような人にこそ、聞いてほしい。
アイドル音楽とか、そういう枠に収まるようなものではないから。
誤解を恐れず率直に言うなら、、、僕は、杏果のソロコンチケットが、ももクロファンクラブ会員の限定販売段階で完売になってしまい、一般の音楽ファンの手にはまず届かない、という現状を、少しばかり残念な気持ちで眺めている。
もちろん、モノノフ緑推しとして杏果を長年応援してきた人たちを軽んじるつもりはないけれど。
でも、、これ以外のチャンネルでも、彼女の歌がもっと広まればいいな、と思っているのだ。
あ、、、いや、僕は別に、杏果のももクロ脱退をそそのかしてるわけじゃないよ(笑)
ももクロっていうグループは、あらゆるものをごった煮のように収めてしまう、ものすごく懐の広い大きな器。
いわゆる「女性アイドルグループ」という類型とは、そもそもかけ離れている。
むしろ、杏果のクリエイティブな側面は、この先のももクロに対して、ひとつの大切な要素となっていくような気もしている。
たとえば、杏果がももクロの曲を作ったらどんなのができるのか、なんて、けっこう興味深いアイデアだと思う。
彼女は当然、外部の作曲家さんなどが知りえないももクロの素顔(内情)を知ってるわけだから、そこから何を引っ張り出してくるのかな? と。
まあ、簡単な課題ではないとは思うけど。
現状はもしかしたら、ソロの活動と、ももクロの一員として求められる活動の間に、ぱっきりと線を引くような意識が強いのかもしれない。
というのも、、、ちょっとだけネタばれを書くと・・・
ライブ終盤、ももクロの楽曲「ゴリラパンチ」を歌ったとき。
この曲は、モノノフから「うっほうっほ〜」っていう熱烈なコールが入る曲。
最近のももクロライブでは、最も盛り上がる曲の一つだ。
当然、このライブのときも、会場はとても盛り上がった。
すると、、歌い終わったとき、杏果はかすかに微妙な表情を浮かべて、こういった。
「いろいろやってきたけど、みんな、この曲が一番盛り上がるんだね。。なんか、ちょっと悔しい・・」
まあ、、、いろんな意見が出てもおかしくない一言ではあるが。。
僕は、杏果の気持ちはわかる気がする。そんな素直さ、まっすぐさこそ、彼女の最大の魅力だ。
ただ、、そんな彼女が、、いや、そんな彼女だからこそ、、、
「ももクロ」というプラットフォームの表現に、いまとはまた違う形でより深く関わったときに、どんなことになるのかな? って興味がある。
例えば楽曲提供をしたとき。あるいは逆に、ももクロの曲を、アレンジをガラッと変えてソロでセルフカバーするという方向もある。うんとアコースティックに振るとか、ギター1本で弾き語る、とか。
まあ、、、いまはまだ、そのときではないかもしれないけど。
物語はまだ始まったばかりだし。あまり先走るのも考えものだね。
でもいつか、そんなことにも興味が出てくるかもしれない。
そんな姿も見てみたい。
そんなところまで思いを巡らせてしまうほど、多くの魅力を感じたライブだった。