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がんの悪さは環境次第(論文クリップ)

がんの転移に関する、非常に興味深い研究。Journal of Clinical Investigation誌より

がんが致死的になるのは、「転移」が起きるから。この研究では、体内の炎症状態(IL-6サイトカイン濃度)が、がん細胞の転移性を左右することを示した。IL-6ががん細胞に働きかけて、同じ細胞をより転移しやすい性質に変質させるという。

なぜこの話が興味深いかというと、、、

がん発生&悪化はこれまで、主に「段階的遺伝子変異」という考え方で説明されてきた。「発がん遺伝子」と呼ばれる一連の遺伝子が変異することで細胞の性質が根本的に変化する、と。

この考えに立つと、がんは遺伝子レベルから悪化した根源的に悪いやつなので、駆逐するしかない、という考え方が自然に出てくる。

それに対してこの研究は、同じがん細胞でも、環境によってすごく悪い状態(転移しやすい)になることもあれば、そうでもない状態(あまり転移しない)になることもあると示している。ここからは、体内の炎症状態を鎮めることで、がんを抹殺せずともおとなしくなる方向に制御する、という発想の治療(予防)が浮かんでくる。

実際、例えば乳がんや大腸がんでは、患者の日常活動量やエクササイズ量が多いほど再発率が低いことがわかっている。運動は、全身の炎症状態を鎮める最適の方法なので、この研究とあわせて理解すると、とても納得がいく。

(もちろん適度な運動によって免疫機能が活性化されるという側面もあるだろうけど)

がん治療が「悪いやつは根こそぎ断つ」という発想一辺倒になっている一つの原因は、「がん細胞は遺伝子レベルから悪いんだから切るしかない」という思考にあると思う。そのあたりの見方が変わってくると、全体の傾向にも変化が出てくるのかもしれない。